生成AIと半導体の関係――文章や画像を生み出す計算を、何が支えているのか

 生成AIに質問すると、画面に文章が表示される。画像の作成を依頼すれば、指示に応じた画像が生成される。その裏側では、コンピューターが大量の計算を行っている。

 この計算を実際に担うのが半導体だ。さらに、計算に使う情報を記憶すること、データを保存すること、機器の間で情報を受け渡すことにも、さまざまな半導体が関わっている。

 生成AIの普及を背景に、計算用チップの開発やメモリーの増産、半導体製造装置への投資がニュースになっている。生成AIの仕組みから、これらの産業とのつながりを見ていく。

目次

この記事で分かること

  • なぜ生成AIの学習や利用に半導体が必要なのか
  • CPU、GPU、メモリー、SSDは、それぞれ何をしているのか
  • 生成AIの需要が、半導体の製造や設備投資にどうつながるのか
  • 関連する企業と最近のニュース

1.3分で分かる概要

 生成AIは、コンピューター上で動くソフトウェアである。文章や画像を扱う場合も、内部では情報を数値に変換して処理している。その処理を支えるのが、CPUやGPUなどの計算用半導体と、情報を保持するメモリーだ。さらに、学習用データや学習済みモデルを保存する記憶装置も必要になる。

 役割を大きく分けると、次の3つになる。

役割主な半導体・機器何をしているのか
計算するCPU、GPU、AI向け専用半導体学習や文章・画像の生成に必要な計算を行う
作業中の情報を置くDRAM、HBMなど計算に使うモデルの数値や途中の結果を保持する
データを保存するNAND型フラッシュメモリーを使ったSSDなど学習用データや学習済みモデルなどを保存する

 半導体が働くのは、AIを学習させるときだけではない。利用者の指示に応じて回答を作るときにも計算が発生する。そのため、生成AIの開発や利用が広がると、それを動かすサーバーやデータセンターの設備にも関係してくる。

2.そもそも半導体とは何か

 半導体とは、電気の通しやすさを制御できる性質を持つ物質である。代表的な材料にシリコンがある。ニュースでは、この材料を使って作られた電子部品やチップも「半導体」と呼んでいる。

 コンピューターの中では、半導体で作られた微細な素子が電気の状態を制御し、数値の計算や情報の記憶を行う。ただし、半導体の役割は一つではない。計算を行うもの、データを記憶するもの、電圧や電流を制御するもの、光を電気信号に変えるものなどがある。生成AIにも、用途の異なる複数の半導体が使われている。

3.生成AIの半導体は、どこで働いているのか

 クラウド型の生成AIサービスでは、主な計算はデータセンター内のサーバーで行われる。

 利用者がスマートフォンやパソコンから入力した指示は、通信回線を通じてサーバーに送られる。サーバーでは学習済みのAIモデルを使って計算し、生成した文章や画像を利用者の端末へ返す。

※本文中の図解は、公開されている参考文献、企業公式資料、報道資料などをもとに内容を独自に整理し、生成AIを用いて作成している。図解は理解を助けるための概念整理を目的としており、各社・各機関の公式図表をそのまま転載したものではない。

 画面を操作しているのは手元の端末でも、その指示を処理している半導体は遠くのデータセンターにある場合がある。IBMのAI推論解説
 一方、パソコンなどの端末内で生成AIを動かす方式もある。この場合は、端末に搭載されたCPU、GPU、NPUなどが処理を担う。NPUは、AIで使う計算を効率よく行うための演算装置である。
 必要な半導体の種類や性能は、AIモデルの大きさや処理内容によって異なる。IntelのAI PC解説

4.「学習」と「利用」の両方で計算する

 生成AIの処理は、「学習する段階」と「利用する段階」に分けて考えられる。

学習する段階

 学習では、大量のデータを使い、モデル内部の数値を調整する。この数値は「パラメーター」と呼ばれ、入力された情報をどのように処理するかに関わっている。計算結果と目標との差を調べ、数値を調整する処理を繰り返すことで、データの特徴や関係をモデルに反映していく。

   大量のデータ → 計算と数値の調整を繰り返す → 学習済みのAIモデル

利用する段階

 利用時には、学習済みモデルを使って、入力に応じた結果を作る。この処理を「推論」と呼ぶ。例えば文章生成では、入力された文章とモデル内部の数値を使って計算し、続く言葉を順に生成する。

   利用者の指示や資料 → 学習済みモデルによる計算 → 文章・画像などの出力

 通常の推論では、質問のたびにモデルを一から学習し直すわけではない。それでも、回答を作るための計算と、計算に必要な情報の読み出しは発生する。IBM Researchの推論解説

なぜGPUが使われるのか

 生成AIの処理には、多数の数値を使った掛け算や足し算が含まれる。GPUは、多くの計算を並行して進める「並列処理」が得意で、この性質がAIの計算に適している。

 大規模な学習や推論でGPUが活用されるのは、このためだ。GoogleのTPUのように、AIで多用する計算に合わせて設計された専用半導体もある。

 CPUは、プログラムの実行や処理全体の制御を担い、用途によってはAIの推論そのものも行う。実際のシステムでは、処理に応じて複数の演算装置を組み合わせている。NVIDIAのGPU解説、Google CloudのTPU解説、IntelのAIハードウェア解説

計算装置にデータを届けるメモリー

 計算装置が高速でも、必要なデータが届かなければ処理を進められない。そこで重要になるのが、メモリーの容量とデータを受け渡す速さである。

 DRAMは、作業中のデータを保持する半導体だ。HBM〈高帯域メモリー〉はDRAMの一種で、複数のチップを積み重ね、大量のデータを高速に受け渡せるようにしている。高性能なAI計算装置と組み合わせて使われる。

 一方、NAND型フラッシュメモリーは、電源を切ってもデータを保持できる。これを制御用の部品などと組み合わせた記憶装置がSSDである。

 身近な作業に例えるなら、DRAMやHBMは「作業中の資料を広げる机」、SSDは「資料を保管する棚」に当たる。MicronのAI向けメモリー解説、キオクシア技術用語集

5.生成AIを支える産業のつながり

 生成AIのサービスが利用者に届くまでには、半導体の設計、製造、サーバーへの組み込み、データセンターの運営など、多くの工程がある。

段階主な仕事
半導体の設計計算や記憶など、必要な機能を回路として設計する
材料・製造装置の供給ウエハー、薬品、ガスや、回路を作るための装置を供給する
半導体の製造設計に基づき、ウエハー上に微細な回路を作る
組み立て・検査チップを接続・保護し、動作を確認する
サーバーなどへの組み込み計算用半導体、メモリー、記憶装置などを機器として構成する
データセンター・サービスの運営機器を動かし、利用者に生成AIサービスを提供する

 半導体を設計する企業が、製造もすべて手掛けるとは限らない。製造を専門企業に委託する分業もある。TSMCは、顧客が設計した半導体の製造を受託する企業の一つだ。TSMC会社概要

 また、半導体の工場では、膜を作る、不要な部分を削る、洗浄するなどの工程に専用の装置を使う。半導体の生産能力を増やす投資は、こうした装置や材料の需要にもつながる。東京エレクトロンの製造工程・製品解説

 データセンターには、電力を供給・制御する半導体や、サーバー同士で情報を受け渡す通信機器も必要になる。生成AIは、計算用チップを中心とした幅広い設備によって動いている。Infineonのデータセンター電源解説

6.関連する主な企業

 生成AIと半導体の関係を見る際には、「何を担当する企業なのか」を分けると理解しやすい。
 以下は本記事で取り上げる代表例であり、性能やシェアの順位を示すものではない。国・地域は本社所在地を基本とする。

国・地域企業本記事に関係する主な役割
米国NVIDIAAIの学習・推論に使うGPUや関連システムを開発
米国GoogleAI向け専用半導体TPUを開発し、クラウドなどで活用
米国MicronDRAM、HBM、NAND型フラッシュメモリーなどを供給
米国Solidigm〈ソリダイム〉SKハイニックス傘下で、データセンター向けSSDなどを提供
日本富士通CPU「MONAKA」や関連するサーバーを開発
日本キオクシアNAND型フラッシュメモリーやSSDを開発・製造
日本東京エレクトロン半導体製造装置を供給
中国アリババ集団AIモデルやクラウドに加え、傘下企業を通じて半導体を開発
台湾TSMC半導体の製造を受託し、先端パッケージ技術も提供

 同じ生成AI関連企業でも、サービスを提供する会社、計算用チップを開発する会社、メモリーを供給する会社、製造を支える会社では役割が異なる。SolidigmのAI向けストレージ紹介、TSMCの先端パッケージ技術紹介

7.最近のニュースに見る、需要の広がり

 2026年9月の日本経済新聞の記事では、生成AIに関わる半導体の開発や設備投資が、複数の分野で取り上げられている。

計算用半導体の開発
 9月12日の記事は、富士通が自社開発CPU「MONAKA」を2027年以降、米国やアジアなどへ販売する計画を報じた。AIを動かす計算基盤には、GPUだけでなくCPUも関わっている。

 アリババについては、9月22日の記事〈24日更新〉が、AI半導体「真武V900」の実用化時期を2027年1~3月期へ前倒しする計画を伝えた。AIモデルやクラウドを提供する企業が、それらを動かす半導体の開発にも取り組んでいる。

保存用の半導体と記憶装置
 9月26日の記事は、SKハイニックス子会社のソリダイムが、2027年にも米国で上場する可能性を報じた。

 同社が手掛けるのは、NAND型フラッシュメモリーやSSDなどの保存分野である。生成AIを支えるデータセンターでは、計算能力に加え、大量のデータを保存し、必要に応じて読み出す能力も求められる。なお、同記事の上場情報は報道段階で、会社の正式発表として伝えられたものではない。

製造装置や地域の生産活動への波及
 9月24日の中国半導体に関する記事は、本土上場の関連187社の純利益合計が、2026年1~6月に前年同期比7.2倍となったと報じた。背景には、AI向け需要と政府の国産化政策があるとしている。この数字は対象企業の利益の伸びを示し、半導体需要そのものの伸び率ではない。

 同日の東北経済の記事では、日銀仙台支店による景気判断の引き上げが報じられた。生成AIの広がりを背景に、半導体製造装置などの生産が伸びたという。

 これらのニュースは、生成AIを動かす設備への投資が、半導体の開発・製造に加え、製造装置や地域の生産活動にも関係していることを伝えている。

8.なぜ今、半導体との関係が注目されるのか

 生成AIでは、モデルを学習させるための計算と、サービスを利用するたびに行う計算の両方が必要になる。

 より大きなモデルを扱う場合や、多くの利用者の依頼を同時に処理する場合には、計算能力とメモリーの容量・転送性能が重要になる。学習用データやモデルを保管するための記憶装置も必要だ。こうした処理を支える設備への投資が、計算用半導体やメモリー、製造装置などの需要につながる。

 一方、ソフトウェアの改良やモデルの小型化によって、同じ処理に必要な計算量を減らす取り組みもある。半導体需要は、利用の広がりと処理の効率化の両方から影響を受ける。

9.今後の動きを知るためのポイント

 今後のニュースでは、次の点を見ると、それぞれの動きを位置付けやすい。

確認すること分かること
学習用か、利用時の推論用かどの段階の計算能力を増やす投資なのか
計算用チップか、メモリーか、保存用か生成AIのどの役割を支える製品なのか
開発発表か、量産開始か、導入済みか計画がどの段階まで進んでいるのか
処理速度、メモリー容量、電力効率のどれを改善するのか技術開発が何を目指しているのか

 生成AIの画面には、半導体や製造装置は見えない。しかし、文章や画像を生成する処理は、計算、記憶、保存、通信といった役割を持つ機器によって実行されている。

 その役割を押さえると、生成AIのニュースと半導体産業のニュースのつながりが見えてくる。

まとめ図解

参考文献

 企業の製品・技術に関する説明は、本文中にリンクした公式資料を参照した。基礎的な関係の整理には、デロイト トーマツの「AIと半導体の関係性」〈2023年8月10日〉も参考にした。
 最近の動きと半導体の分類については、以下の日本経済新聞記事〈提供資料〉を参照した。

  • データセンターとは何か―AI時代を支える設備、産業構造と地域社会の課題
  • 日経新聞「メモリー・ロジック・パワー… 半導体って63種類もあるの?」2026年8月23日
  • 日経新聞「富士通がAI半導体を輸出、スパコン技術活用 米国やアジアの需要開拓」2026年9月12日
  • 日経新聞「中国アリババ集団、次世代半導体の投入半年前倒し AI需要増に対応」2026年9月22日、24日更新
  • 日経新聞「中国半導体の1〜6月純利益7.2倍 AI活況、製造装置などに波及」2026年9月24日
  • 日経新聞「日銀、東北景気判断21カ月ぶり引き上げ AI需要で半導体製造装置伸び」2026年9月24日
  • 日経新聞「韓国SKハイニックス子会社、27年に米上場と報道 キオクシアと競合」2026年9月26日

※本文中の図解は、公開されている参考文献、企業公式資料、報道資料などをもとに内容を独自に整理し、生成AIを用いて作成している。図解は理解を助けるための概念整理を目的としており、各社・各機関の公式図表をそのまま転載したものではない。

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